薄毛が気になって調べはじめると、治療薬や施術の名前がいくつも出てきて、結局どれを選べばいいのか分からなくなるのではないでしょうか。
実は、AGAの治療法には日本皮膚科学会がまとめた診療ガイドラインがあり、治療法ごとに5段階の推奨度が付けられています。「行うよう強く勧める」とされる治療がある一方で、「行わないほうがよい」「行うべきではない」と明記された治療もあります。この推奨度を知っているかどうかで、選択肢の見え方は大きく変わります。
この記事では、ガイドラインの推奨度を軸にAGAの治療法を整理し、費用の目安や実際にクリニックで購入されている治療の傾向まで解説します。
AGAの治療法は、日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」で評価されています。国内外の臨床試験を集め、治療法ごとの有効性を検証したものです。
推奨度は次の5段階に分かれています。
| 推奨度 | 意味 |
|---|---|
| A | 行うよう強く勧める |
| B | 行うよう勧める |
| C1 | 行ってもよい |
| C2 | 行わないほうがよい |
| D | 行うべきではない |
主な治療法の推奨度は以下のとおりです。男性型脱毛症と女性型脱毛症で評価が分かれる治療がある点に注意してください。
| 治療法 | 推奨度 |
|---|---|
| フィナステリドの内服 | A(男性型)/D(女性型) |
| デュタステリドの内服 | A(男性型)/D(女性型) |
| ミノキシジルの外用 | A(男性型は5%、女性型は1%) |
| 自毛植毛術 | B(男性型)/C1(女性型) |
| LEDおよび低出力レーザー照射 | B |
| 成長因子導入および細胞移植療法 | C2 |
| 人工毛植毛術 | D |
| ミノキシジルの内服 | D |
内服薬と外用薬のうち3つがA評価を得ている一方、頭皮への注入で発毛を促す治療はC2、ミノキシジルを飲む治療と人工毛の植毛はDと評価されています。
ただしこのガイドラインは2017年に公開された第2版で、それ以降のエビデンスは反映されていません。推奨度は現時点での医学的な評価の目安として捉えてください。
AGAはandrogenetic alopecia(男性型脱毛症)の略で、思春期以降にはじまり徐々に進行する脱毛症です。ガイドラインは、1990年代前半の国内統計をもとに日本人男性の発症頻度を全年齢平均で約30%とし、現在もほぼ同程度としています。年代別では20代で約10%、30代で20%、40代で30%、50代以降で40数%と、年齢とともに高くなります。
進行の仕組みには男性ホルモンが関わっています。テストステロンが5α還元酵素によってジヒドロテストステロン(DHT)に変換され、前頭部や頭頂部の毛包でDHTが受容体に結合すると、毛が育つ期間が短くなります。その結果、髪が細く短くなり、最終的には表面に現れなくなります。
薄くなる場所は男女で異なります。男性は額の生え際が後退したり頭頂部が薄くなったりするのに対し、女性は頭頂部の比較的広い範囲が全体的に薄くなるパターンをとります。発症時期にも差があり、女性は更年期に多くみられます。
こうした違いから、近年は女性の薄毛を「女性型脱毛症」と呼び分けることが国際的にも一般的になってきました。ガイドラインでも病名として女性型脱毛症が使われています。
AGAで検討される治療は、性別と進み具合、これまでの経過によって候補が変わります。まず状況ごとの候補を整理します。
| 悩み・状況の特徴 | 候補になる治療 | なぜ候補になるか | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 男性で、生え際や頭頂部が気になり始めた | フィナステリドまたはデュタステリドの内服+ミノキシジルの外用 | ガイドラインで推奨度Aと評価されている | 処方には診察が必要。効果の確認には6か月程度かかるとされる |
| 男性で、内服を続けているが変化を感じにくい | フィナステリドからデュタステリドへの変更、ミノキシジル外用の併用など | 薬剤の種類や組み合わせの調整は診察のうえで判断される | ミノキシジルの内服は推奨度Dで勧められていない |
| 女性で、薄毛が気になる | ミノキシジル1%の外用(女性用製剤) | ガイドラインで女性型脱毛症にもA評価とされている | フィナステリド・デュタステリドの内服は女性型脱毛症にD評価 |
| 頭皮への注入治療を検討している | 成長因子導入・幹細胞培養上清液などの注入 | ガイドラインでは成長因子導入・細胞移植療法をC2と評価している | 薬による治療が優先される位置づけ。費用も高くなりやすい |
上の表は状況ごとの候補を整理したものです。同じ状況でも適した治療は診察の結果によって変わります。最終的な判断は診察が必要です。
このうちガイドラインでA評価を得ている治療は3つです。いずれも薬による治療で、内服が2つ、外用が1つという内訳になります。
5α還元酵素のうちII型を阻害し、DHTが作られるのを抑える薬です。国内では医療用医薬品として承認されており、効能又は効果は「男性における男性型脱毛症の進行遅延」と定められています。
ガイドラインが引用する日本人男性414名を対象とした試験では、48週間の投与後に頭頂部の写真で判定したところ、1mg/日の群の58%、0.2mg/日の群の54%に軽度改善以上の効果が認められました。さらに投与を続けた研究では、2年間で68%、3年間で78%と改善割合が増える傾向が示されています。
同じくDHTの生成を抑える薬で、5α還元酵素のI型とII型の両方に作用する点がフィナステリドとの違いとされています。国内では医療用医薬品として承認されており、効能又は効果は「男性における男性型脱毛症」です。
頭皮に直接塗るタイプの薬です。ガイドラインでは男女いずれもA評価ですが、推奨されている濃度は異なり、男性型脱毛症は5%、女性型脱毛症は1%とされています。国内で一般用医薬品として承認されている製品も男性用と女性用に分かれており、効能はいずれも「壮年性脱毛症における発毛、育毛及び脱毛(抜け毛)の進行予防」です。
ここで注意したいのが、同じミノキシジルでも塗る場合と飲む場合で評価が正反対になる点です。外用はAですが、内服はDとされています。この違いについては後の項目で詳しく触れます。
薬以外でもっとも評価が高いのは自毛植毛術で、男性型脱毛症にB(行うよう勧める)とされています。自分の後頭部などから毛包ごと採取して薄い部分に移植する外科的な方法です。女性型脱毛症にはC1(行ってもよい)と評価が下がります。一方、人工毛を植える人工毛植毛術はDとされており、区別が必要です。
効果の現れ方には個人差がありますが、ガイドラインは「少なくとも6カ月程度は内服を継続し効果を確認すべき」としています。数週間で変化を判断するのは難しく、一定期間の継続が前提になる治療といえます。
前述の日本人を対象とした研究でも、改善が認められた割合は継続に伴って増える傾向を示しました。短期間で結論を出さず、医師と相談しながら経過をみていく姿勢が求められます。
続け方について、ガイドラインは「内服を中止すると効果は消失する」と明記しています。飲み終えた後も状態が保たれるわけではないため、始める前に継続の見通しを含めて相談しておくとよいでしょう。
美容クリニックでは、頭皮に有効成分を注入するメニューが「育毛メソセラピー」「発毛水光注射」「毛髪再生メソセラピー」などの名称で提供されています。メソセラピーとは、有効成分を注射や専用機器で皮膚の浅い層に届ける方法の総称です。
このうち成長因子の導入や細胞移植療法にあたるものが、ガイドラインでC2(行わないほうがよい)と評価されています。
ただし、その理由を正確に押さえておく必要があります。ガイドラインはC2の根拠として、これらの臨床試験の多くが限られた施設で行われている段階にあり、安全性を含めた有効性が十分に検証されているとはいえない点を挙げています。あわせて「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」などの法規に則って施術する必要があるものも多く、現時点では広く一般に実施できるとは言い難いとしています。
一方でガイドラインは、これらを「今後が期待される治療法ではある」とも記しています。有害だから避けるべきだという評価ではなく、検証が追いついていないという位置づけです。
また、C2の対象として名指しされているのは、毛を作る力をもつ細胞そのものの移植と、その細胞を培養した液から作られる成分です。クリニックで提供される注入メニューには成長因子や幹細胞培養上清液のほかミノキシジルなども含まれ、中身は一様ではありません。これらは医薬品として承認されたものではない場合があります。すべてが同じ評価に当てはまるとは限らないため、検討する際は何を注入するのかを個別に確認することをおすすめします。
ここからは、キレイパスの購入データを集計した結果を紹介します(2026年8月3日時点)。
購入されたAGA関連チケットを内容で分けると、次のような構成でした。
ガイドラインでA評価を得ているのは内服薬と外用薬ですが、実際に購入されているメニューはその逆の構成でした。掲載チケット数では内服薬・外用薬が4割近くを占めており、選択肢の有無ではなく選ばれ方の偏りを示す結果です。
※上記はキレイパスが独自にチケットのメニュー内容から分類したもので、実際に行われた治療の比率と一致するものではありません。
AGA関連チケットの購入者を性別で見ると、女性が82.2%、男性が16.5%、その他・未回答が1.3%でした。
| 性別 | 構成比 |
|---|---|
| 女性 | 82.2% |
| 男性 | 16.5% |
| その他・未回答 | 1.3% |
AGA関連チケットでも、購入者の8割以上を女性が占めています。薄毛の悩みは男性だけのものではないことがうかがえます。
※キレイパスは美容医療全般を扱うプラットフォームで、利用者は女性が多数を占めます。上記はその母集団における構成比であり、日本のAGA治療全体の男女比を示すものではありません。
年代別の構成比は次のとおりです。
30代と40代を合わせると約63%を占めます。
| 年代 | 口コミ平均点(5点満点) |
|---|---|
| 20代以下 | 4.2 |
| 30代 | 4.4 |
| 40代 | 4.1 |
| 50代以上 | 4.1 |
いずれの年代も4.1以上で、年代によって評価が大きく変わる傾向は見られませんでした。どの世代でも一定の評価を得ていると読み取れます。
※キレイパス掲載チケットの購入・口コミデータをもとに集計(自社データ)。評価はクリニックでの体験に対するもので、施術の効果を保証するものではありません。本データは利用実態の参考情報であり、購入を推奨する趣旨のものではありません。
キレイパスに掲載されている販売中のチケット(2026年8月11日時点)で見ると、価格帯は治療の種類によって大きく異なります。多くのチケットは次の範囲(税込)に収まります。
| 治療の種類 | 価格帯 ※内服薬にはガイドラインで推奨度Dとされるミノキシジルの内服薬(国内未承認)を含むチケットも含まれます |
|---|---|
| 内服薬・外用薬 | 3,700〜29,090円 |
| 頭皮への注入・照射 | 14,850〜57,600円 |
A評価にあたるフィナステリドの内服薬は、もっとも安いもので3,700円から販売されています。表の範囲には収まりませんが、ガイドラインで推奨度Dとされるミノキシジルの内服薬を含むチケットは2,750円から販売されています。価格だけで選ばないよう注意してください。また内服薬・外用薬には1か月分から数か月分の定期便までが混在するため、上限側は幅が出ます。比較する際は、同じ期間あたりの費用に換算して見るとよいでしょう。
なお頭皮の点滴・スパや頭皮アートメイクは、上の2区分とは別の価格帯になります。注入治療の幅が広いのは、注入する薬剤の種類と施術する範囲に差があるためです。頭皮の一部だけを対象とするメニューと頭部全体を対象とするメニューでは、同じ名称でも価格が変わります。
また、AGA治療は保険が適用されない自由診療です。表示価格のほかに初診料や再診料、麻酔代などが別途かかる場合があり、総額は医療機関によって異なります。継続が前提となる治療のため、1回あたりの費用だけでなく、続けた場合の負担も確認しておくことをおすすめします。治療法を決めきれない場合も、来院診療・オンライン診療のチケットを内容と価格から比較できます。
女性の薄毛は、男性と同じ治療が使えるわけではありません。クリニックによっては「FAGA」と呼ばれることもありますが、ガイドラインの病名は女性型脱毛症です。
ガイドラインはフィナステリド・デュタステリドの内服を、男性型脱毛症にはA、女性型脱毛症にはD(行うべきではない)と評価しています。推奨度が正反対に振れる、数少ない例です。
添付文書上の扱いも同様です。フィナステリド・デュタステリドはいずれも効能又は効果が「男性における」男性型脱毛症に限られ、女性に対する適応はありません(禁忌の詳細は後述します)。ガイドラインによれば、137名の女性を対象とした1年間の比較試験でフィナステリドの有効性は認められませんでした。
一方、ミノキシジルの外用は男女ともにA評価です。ただし女性型脱毛症に推奨されているのは1%の製剤で、男性型脱毛症の5%とは異なります。国内で承認されている一般用医薬品も男性用と女性用に分かれているため、購入時に確認が必要です。
なお、女性の薄毛には男性ホルモンだけでは説明できない要因が関わる場合もあります。ガイドラインは、慢性休止期脱毛や膠原病、慢性甲状腺炎などの全身性疾患に伴う脱毛、貧血、急激なダイエットに伴う脱毛などを見分けることの重要性を挙げています。自己判断で薄毛の種類を決めつけず、まず診察を受けることが大切です。
AGA治療には承認薬と未承認薬があり、注意点は薬によって異なります。推奨されていない治療、承認薬の副作用、受けられない場合の順に整理します。
前述のとおり、ミノキシジルの内服は推奨度Dとされています。ガイドラインはその理由を具体的に説明しています。
ミノキシジルはもともと降圧剤として開発された成分ですが、国内では内服薬として認可されていません。なおAGAには、国内で承認された内服薬(フィナステリド・デュタステリド)と外用薬(ミノキシジル外用)があります。ガイドラインによれば、男性型脱毛症の治療薬として内服が認可されている国もないとされています。それにもかかわらず、全身の多毛症を起こす副作用があることを根拠に処方されたり、個人輸入で入手されたりする実態があり、医薬品医療機器等法の観点から問題視されていると記されています。
副作用としては、内服用製剤の添付文書の市販後調査欄に、胸痛、心拍数増加、動悸、息切れ、呼吸困難、うっ血性心不全、むくみや体重増加といった心血管系の障害に関する記載があるとされています。ガイドラインは、利益と危険性が十分に検証されていないため、男性型脱毛症・女性型脱毛症ともに行わないよう強く勧めるとしています。
医療機関でミノキシジルの内服薬が処方される場合、国内未承認のため医師が個人輸入した薬剤を用いることになり、自由診療として扱われます。この場合、健康被害が生じても医薬品副作用被害救済制度の対象となりません。厚生労働省も個人輸入について注意を呼びかけています。
A評価の治療であっても副作用がないわけではありません。フィナステリドの添付文書では、重大な副作用として肝機能障害が報告されています。ガイドラインが引用する複数の試験をまとめた解析では、性機能障害についてフィナステリド投与群がプラセボ(有効成分を含まない薬)群より上昇する傾向があるとされています。
また、ガイドラインでは、フィナステリド服用中に前立腺がんの指標となる血清PSA濃度が約50%低下したとする試験が引用されています(添付文書では男性型脱毛症患者で約40%と記載されています)。ガイドラインは、前立腺がん診断の目的でPSA濃度を測定する場合は2倍した値を目安として評価すべきとしています。検査を受ける際は、服用中である旨を医師に伝えてください。
なお国内の臨床試験は20歳以上を対象に行われており、20歳未満に対する安全性は確立していません。服用中に気になる症状があらわれた場合は、自己判断で中止せず処方を受けた医療機関に相談してください。
承認されている内服薬には、添付文書で投与しないこととされている対象が定められています。フィナステリド(プロペシア錠・2023年8月改訂)は過敏症の既往歴のある患者と、妊婦・妊娠している可能性のある女性・授乳中の女性。デュタステリド(ザガーロカプセル・2025年8月改訂)は過敏症の既往歴のある患者に加え、女性、小児等、重度の肝機能障害のある患者が禁忌です。同じAGA治療薬でも、禁忌とされる範囲は薬によって異なります。
ほかに服用している薬がある場合や、肝機能に不安がある場合は、AGA治療を始める前に医師へ伝えてください。前立腺の検査を受ける予定がある場合は、前項のとおり服用中である旨を伝えてください。
AGA治療は保険適用外の自由診療です。頭皮への注入治療については、承認された医薬品を承認された用法とは異なる目的で用いる場合があり、その際は適応外使用にあたります。何をどのような目的で使うのか、事前に説明を受けておくことをおすすめします。
薄毛治療は継続が前提になるため、初回の費用だけでなく続けた場合の負担と通いやすさもあわせて検討するとよいでしょう。
AGAの治療法は、日本皮膚科学会のガイドラインで推奨度が示されています。A評価はフィナステリドの内服、デュタステリドの内服、ミノキシジルの外用の3つで、内服薬2つは男性型脱毛症に限った評価です。
一方、頭皮への注入治療のうち成長因子導入や細胞移植療法はC2、ミノキシジルの内服と人工毛植毛術はDとされています。美容医療プラットフォームで実際に購入されているメニューは注入治療が中心のため、選択肢を検討する際は推奨度と照らし合わせて判断するとよいでしょう。
キレイパスの購入データでは、AGA関連チケットの購入者の8割以上を女性が占めていました。薄毛の悩みは男性だけのものではありません。
効果には個人差があり、必ず治療の効果を保証するものではありません。ミノキシジルの内服薬は国内未承認の医薬品で、取り扱う医療機関では医師の個人輸入による自由診療として処方されます。持病がある方、妊娠中・授乳中の方は施術・服薬前に必ず医師にご相談ください。利用データは2026年8月3日時点、料金は2026年8月11日時点の集計であり、今後変動する可能性があります。
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