シミや肝斑の治療を調べていると、必ずと言っていいほど名前が出てくるのがトランサミンではないでしょうか。
トランサミンは第一三共が販売する医療用医薬品の商品名で、中身の成分はトラネキサム酸です。ただ、この薬をめぐる情報には一つねじれがあります。国が承認しているトランサミンの効能に、しみや肝斑は含まれていません。一方で、市販薬のなかには肝斑を効能として承認されているものがあります。
この記事では、処方薬・市販薬・クリニックの施術でトラネキサム酸の扱いがどう違うのかを、国の承認情報と公的な診療指針、そしてキレイパスの利用データから整理します。
トランサミンとトラネキサム酸は、別のものを指す言葉ではありません。トランサミンが商品名、トラネキサム酸が成分名で、同じ成分を違う呼び方で呼んでいるだけです。
混乱が起きやすいのは、同じ成分でも製品の区分によって、しみ・肝斑に対する国の承認の有無が変わる点にあります。
| 呼び名 | 何を指すか | しみ・肝斑への承認 ※2026年8月13日時点 | 入手方法 |
|---|---|---|---|
| トランサミン | 医療用医薬品の商品名(内服・注射など) | 承認された効能には含まれていない | 医師の処方 |
| トラネキサム酸 | 成分名(後発医薬品も流通) | 製品の区分によって異なる | 製品による |
| トランシーノEXなど | 市販の第1類医薬品 | しみ(肝斑に限る)として承認 | 薬剤師のいる薬局・薬店 |
| トラネキサム酸配合の医薬部外品 | 薬用化粧水・美容液など | メラニン抑制等の効能で承認。肝斑治療が目的ではない | 市販 |
| トラネキサム酸配合の化粧品 | 化粧水・美容液など | 承認を受ける区分ではない | 市販 |
処方薬のほうが正式で効き目も強い、というイメージを持たれることがありますが、しみ・肝斑という効能に限って見ると、承認を受けているのは市販の第1類医薬品のほうです。医療用のトランサミンを肝斑の目的で使う場合は、承認された効能とは別の使い方をしていることになります。
トラネキサム酸は、体内でプラスミンという酵素のはたらきを抑える成分です。プラスミンは本来、血液の中でフィブリンを溶かす役割を担っています。トランサミンが止血の薬として使われてきたのはこの性質によるものです。
このプラスミンは、色素を作るメラノサイトを活性化させる情報伝達にも関わっていると考えられています。プラスミンのはたらきを抑えることで、メラニンが作られる手前の段階に作用することが期待されるという考え方が、肝斑への応用につながりました。
電子添文(国が承認した公式の医薬品情報)に記載されているトランサミンの効能は、次のとおりです。
止血と、皮膚や喉の炎症にともなう症状が対象で、しみ・肝斑はここに含まれていません。
クリニックで肝斑を目的にトランサミンが処方される場合、それは医療用医薬品を承認された効能とは別の目的で使う「適応外使用」にあたります。医師の判断で行われる診療で、健康保険は使えず自由診療になります。入手経路は、医師の診察を受けたうえでの院内処方または院外処方です。
適応外にあたるのは内服だけではありません。イオン導入・エレクトロポレーションや水光注射・点滴でトラネキサム酸を美白目的に用いる場合も、承認された効能・用法とは異なる使い方にあたり、いずれも自由診療です(導入に用いる薬剤は製品により区分が異なります)。
あわせて知っておきたいのが、医薬品副作用被害救済制度の扱いです。この制度は、承認を受けた医薬品であっても、決められた効能・効果や用法・用量に従って使われていない場合には、原則として救済の対象になりません。美容目的でのトラネキサム酸の使用は、内服・導入・注入のいずれもこれに該当する可能性があります。
効果を感じるまでの期間には個人差があり、一律の目安を示すことは難しいのが実際のところです。ここでは判断の材料になる公的な情報を整理します。
電子添文に記載された用法・用量は、トラネキサム酸として1日750〜2,000mgを3〜4回に分けて経口投与するというものです。ただしこれは前の章で挙げた承認された効能に対する用法であり、肝斑を目的とする場合の用量・期間を定めたものではありません。適応外の使い方になるため、実際の処方内容は診察のうえで医師が判断します。
市販薬のほうには服用期間の目安が明示されています。第1類医薬品のトランシーノEXは、成人1回2錠を1日2回、トラネキサム酸として1日750mgを服用する用法です。製品情報には2か月を超えて続けて服用しないこと、効果がわかる目安として1か月程度は服用することが記載されています。市販薬を選ぶ場合は、この期間の上限がひとつの基準になります。
肝斑については、公的な診療指針でも寛解と増悪を繰り返す難治性の色素異常症と位置づけられています。短期間で完全になくすことを前提にせず、経過を見ながら続けるかどうかを医師と相談していく治療になります。
同じ「シミ」という言葉でも、医学的には種類が分かれ、向いている対処法も変わります。トラネキサム酸の内服が候補に挙がりやすいのは肝斑ですが、それ以外の色素斑では別の選択肢が中心になります。
| 悩みの特徴 | 候補になる方法 | 選ぶ理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 両頬に左右対称、境界がぼんやりした色ムラが広がる(肝斑) | トラネキサム酸の内服 | メタ解析で有効性が報告され診療指針にも記載 | 他の色素斑との見分けが難しい |
| 輪郭がはっきりした濃いシミが点在する(日光黒子) | レーザー治療・光治療(IPL) | 診療指針で推奨度1(強く推奨する)と評価 | 肝斑が混在すると照射で悪化することがある |
| 肝斑とはっきりしたシミが混ざっている | 遮光・外用・内服を先行し、必要に応じて照射を併用 | 照射は保存的治療で不十分な場合の併用療法 | 併用の可否と順序は診察で決まる |
| 顔全体のくすみ・色ムラが気になる/飲み薬に抵抗がある | イオン導入・エレクトロポレーションなど | 部位を限定せず顔全体に薬剤を届けられる | 内服とは薬剤の届き方が異なり単純比較できない |
最終的にどの方法が適しているかは、色素斑の種類の見分けを含めて診察が必要です。
肝斑は主に両頬に対称性に生じる色素異常症で、紫外線の影響と女性ホルモンが悪化因子として知られています。トラネキサム酸の内服が候補になりやすいのはこのタイプです。30代・40代で気になり始める方が多い一方、20代でも相談されることがあります。妊娠中・授乳中の方やピルを服用している方は、服用の可否を必ず医師に確認してください。クリニックによってはビタミンCの内服が併せて処方されることもあるため、シナールの解説記事もあわせてご覧ください。
境界が比較的はっきりした褐色の斑は日光黒子(老人性色素斑)であることが多く、レーザーや光治療が中心の選択肢になります。内服だけで対応しようとすると期待とずれる可能性があります。40代以降で増えやすいタイプですが、日焼けの習慣があれば年代を問わず出ます。詳しくは肝斑とレーザー治療の記事もあわせてご覧ください。
実際には複数の色素斑が混在していることが少なくありません。この場合、照射の設定を誤ると肝斑側が悪化する可能性があるため、順序と出力の判断が重要になります。過去にレーザーを受けて濃くなった経験がある方は、その経過を診察時に伝えると判断材料になります。
肌に直接トラネキサム酸を届けるイオン導入やエレクトロポレーション(微弱な電気で薬剤を角層より深くに届ける方法)は、飲み薬とは別の選択肢として扱われています。敏感肌の方や肌荒れが出やすい方は、施術の可否や薬剤の濃度について医師に相談してください。
厚生労働科学研究費補助金による「美容医療診療指針(令和3年度改訂版)」には、肝斑の治療について順序を示す記述があります。ほかの記事ではあまり触れられない部分なので、原文に沿って整理します。
まず前提として、指針は「肝斑の対処法としては遮光に留意することが必須で、この指導が最も重要である」と明記しています。そのうえで、メラニンの生成抑制と排出促進を狙った外用・内服が行われる、という構成です。トラネキサム酸については、治療効果と安全性のメタ解析により肝斑の治療に有効であると報告されている、と紹介されています。
レーザー・光治療(IPL)の位置づけは、クリニカルクエスチョン「シミ(肝斑)にレーザーや光治療(IPL)は有効か?」に対する推奨度2(条件によっては、行うことを弱く提案する)として示されています。推奨文は次のとおりです。
レーザーや IPL 照射は、遮光、美白剤外用や内服などの保存的治療を行って、十分な効果の得られない場合に併用療法として行っても良い。施術者は、各々の機器の特性について習熟し、十分な説明と同意のもとに治療を行う必要がある。
つまり照射は、内服・外用より先に来るものではなく、それでも足りないときの併用という位置づけです。同じ指針でも、日光黒子に対するレーザー・光治療の推奨度は1(治療を希望する患者には、強く推奨する)とされており、同じ「シミ」でも種類によって評価が分かれています。
あわせて指針は、日光黒子などに広く使われる高いエネルギー密度(高フルエンス)でのQスイッチルビーレーザーやQスイッチアレキサンドライトレーザーの照射では、強い炎症が起きて肝斑が悪化することが知られているとも記載しています。肝斑がある状態でシミ取りの照射を検討する際に、診察が欠かせない理由がここにあります。
指針が示すのは治療の順序ですが、実際に選ばれている方法はどうでしょうか。キレイパスに掲載されているチケットのうち、トラネキサム酸を含むものを購入した方(直近2年)のデータを集計しました。チケット名の記載をもとに内服/導入/注入に分類しています(複数の施術がセットのチケットは主となる施術で分類)。
| 使われ方 | 購入の構成比 ※四捨五入のため合計が100%になりません |
|---|---|
| イオン導入・エレクトロポレーションなど | 67.3% |
| 水光注射・点滴など | 26.6% |
| 内服(飲み薬) | 6.0% |
| その他 | 0.1% |
トランサミンという名前から飲み薬を思い浮かべる方が多い一方で、キレイパスでの購入は内服以外(導入・注入)が9割以上を占めていました。ただしこれは、内服薬が院内での処方を中心に扱われ、チケットという形では出てきにくいという掲載側の事情も反映しています。クリニックでの治療全体の比率を示すものではありません。
20代と30代で全体の約4分の3を占めています。集計対象には美白・くすみを目的としたチケットも含まれます。肝斑治療そのものの年代分布を示すものではありません。内服のチケットだけで見ても、20代・30代が中心という傾向は変わりませんでした。
| 年代 | 口コミ平均点(5点満点) |
|---|---|
| 20代以下 | 4.5 |
| 30代 | 4.3 |
| 40代 | 4.4 |
| 50代以上 | 4.4 |
施術後に投稿された口コミの平均点を年代別に見ると、いずれの年代も4.3以上で、年代によって評価が大きく変わる傾向は見られませんでした。どの世代でも一定の評価を得ていると読み取れます。
※キレイパス掲載チケットの購入・口コミデータをもとに集計(自社データ)。評価はクリニックでの体験に対するもので、薬剤の効果を保証するものではありません。
※本データは利用実態の参考情報であり、購入を推奨する趣旨のものではありません。
トラネキサム酸は剤形によって料金の考え方が変わります。キレイパスに掲載されている販売中のチケットを、使われ方ごとに分けて整理しました(2026年8月13日時点で販売中のチケットの表示価格。掲載内容は変動する可能性があります)。
| 使われ方 | 料金の目安 |
|---|---|
| 内服(30日分) | 3,000円〜7,480円 |
| イオン導入・エレクトロポレーションなど | 4,400円〜25,400円 |
| 水光注射・点滴など | 4,400円〜39,600円 |
内服は30日分と明記されたチケットの価格で揃えています。導入・注入は上下10%を除いた範囲で、多くのチケットがこの価格帯に収まります。
料金に何が含まれるかはチケットごとに異なります。初診料・再診料、麻酔代、配送料などが別途かかる場合があるため、購入前に条件を確認してください。
施術名から選べなくても、気になる悩みから候補を比較できます。キレイパスでは、購入前に料金・対象条件・別途かかる費用の有無・口コミを確認できます。
トランサミンは長く使われてきた薬ですが、注意すべき点はあります。ここでは電子添文の記載をもとに整理します。
血栓に関わる状態がある方は慎重な判断が必要です。電子添文では、脳血栓・心筋梗塞・血栓性静脈炎などの血栓のある患者、および血栓症があらわれるおそれのある患者について、血栓を安定化するおそれがあると注意喚起されています。術後で寝たきりの状態にある方、圧迫止血の処置を受けている方も同様です。
腎機能に障害のある方は、血中濃度が上がることがあるため注意が必要とされています。妊婦は治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与、授乳婦は授乳の継続または中止を検討することとされ、高齢者は減量するなど注意することとされています。
なお、ピルなど経口避妊薬との併用については電子添文の併用禁忌・併用注意に記載はありませんが、血栓のリスクに関わる要素であるため、服用中の薬は必ず診察時に医師へ伝えてください。
内服のトランサミンに、施術のようなダウンタイムはありません。イオン導入やエレクトロポレーションでは一時的な赤みが出ることがありますが、機器の設定や薬剤、肌の状態によって差があります。
電子添文の禁忌として明記されているのは、トロンビンを投与中の患者です。併用により血栓形成傾向が増大するおそれがあるとされています。このほか、ヘモコアグラーゼ、バトロキソビン、凝固因子製剤は併用注意にあたります。本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある方は、電子添文で注意が必要な患者として挙げられており、投与の可否は診察で判断されます。
服用できるかどうかは、既往歴や併用薬を含めた診察で決まります。持病がある方、他の薬を飲んでいる方は、お薬手帳を持参して相談してください。
施術名を決めきれない場合は、気になる悩みからチケットを比較したり、カウンセリングから相談できるクリニックを探したりする方法もあります。
トランサミンは、成分名をトラネキサム酸という医療用医薬品です。記事の要点を整理します。
肝斑と日光黒子では対処法が変わり、見分けには診察が必要です。気になる症状がある場合は、自己判断で市販薬や内服を始める前に、クリニックで相談することをおすすめします。
本記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療を目的とするものではありません。効果には個人差があります。しみ・肝斑を目的としたトラネキサム酸の使用は、承認された効能とは異なる適応外使用にあたる自由診療です。適否については医療機関にご相談ください。掲載価格・集計データは2026年8月13日時点のもので、変動する可能性があります。
編集:キレイパス編集部
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